2014年1月18日土曜日

私がいかにしてベトナム人社長とミーティングしているか

プロジェクトを進める際になかなか難しいのが、社長とのミーティングだったりします。
この会社では、社長が会社の意思決定のすべてを担っているので、重要な問題は必ず彼女と話す必要があります。


が、そこには大きな制約が2つ、立ちはだかっています。

1つ目は、時間の制約です。
社長は忙しく動き回っているので、そんな多くの時間をミーティングに割くことが出来ません。
何故かこの会社では(ベトナムでは?)、重要なお客さんがいきなりオフィスに現れたりし、毎週決まった時間にミーティングすら出来ないので、ミーティング数日前に予定をブロックしてもらいます。それでも駄目だったりするんですが。

もう1つが、言語の制約です。
私が働いている会社の社長はベトナム人で英語を話さず、必要に応じてインターンの学生に通訳をしてもらいながら、プロジェクトを進めています。

言語に関して制約だなと思うのは、
・相手が普段話している内容を聞き取ることができない
・言い回しなどの細かいニュアンスが伝わりにくい(伝えにくい)
の2つで、これによって入ってくる情報量が相当制限されるように感じます。



要するに、
話すチャンスも頻繁にとれない、話すときは通訳するインターンを呼んで、英語ーベトナム語で細かいニュアンスを時間をかけて認識合わせしながら行うわけです。

そんな困難がありつつも9カ月ほど経ったので、それに対して今どんな感じで工夫してやっているのか書いておこうと思います。
一言で言うと、1回あたりのミーティングの密度をどれだけ濃くするかという挑戦です。




・準備編

【議題を設定する】
何について話すのか準備していないと、限られた時間を有効活用することは出来ません。
どんなミーティングでも共通の事だと思います。


【それぞれの議題での到達目標と優先順位を決定する】
この話題はここまで話しておきたい、この議題については疑問を全部ぶつける、あるいは質問自体は書面でやり取りして、その回答についての質問をミーティングできく等、どの議題で何を話し合いたいか、どこまで進めたいか考えておきます。
特に重要になってくるのが、時間が無いときにどの議題を後回しにするか、です。


【自分の質問に対する相手の回答の想定と、それに対する追加の質問を考える】
相手の回答を聞いて、それから考えるのに時間が掛かってしまうこともあるので、質問のその先まで考えていた方が、MTGの時に楽です。英語だと、どういう言い方をすればいいかを悩むことがあるので尚更。
質問の仕方が不十分で、相手がどう答えればいいのかわからない、ということも起こるので、そういう意味でも質問は練っておいた方がスムーズだなと思います。


【時間は3~4倍かかると想定】
純粋に、自分話す→相手話す、という会話のキャッチボールが
自分話す→通訳ベトナム語で話す→相手話す→通訳英語で話す
となるので、単純計算で最低2倍は時間がかかります。
さらに、自分ー通訳間では、お互い第二言語で話すので、細かいニュアンスの確認や、どういうことを言ったのか確認する必要もままあります。日本語でするときの3倍~4倍の時間で話し合う時間を見積もっています。



・ミーティング中編

【タイムマネジメントが何より大事】
これをやらないと、準備が無駄になります。
必ず初めに、終わりの時間を確認します。そして、議題ごとにどれくらいの時間で、どの順番で話せばいいか考えます。

少なからずあるのが、予想していた回答とかなり違う回答が返ってきて、それについてあれこれ聞いているうちに時間が無くなってしまうこと。
泥沼にはまりそう、と思った場合はさっさと質問を引っ込めて、次のアジェンダに移ります。それについては質問の仕方を変えるべきか、何らかの情報の非対称がある場合が多いので。


【説明するツールはあればあるだけ良い】
紙とペンと用意して、すぐに絵や図で説明できるようにするのもそうですし、写真を見せる、データで示す、Googleで画像検索する、翻訳アプリで直接ベトナム語を見せる等、説明する手間を惜しまない&そのための準備もしておきます。


【ポジティブなワードを意識的に使う】
外国人とのコミュニケーションで、さらにこちらは母国語を使っていないので、1つ1つの会話を繊細に扱う必要があると思っています。
例えば話を聞いているときに頷く、OKなどの相槌を打ったり、私もそう思う、賛成だ、とまめに言って、あなたを理解してるということをわかってもらいます。


【目は出来るだけ合わせる】
通訳を介す場合、直接会話する相手は通訳者なので、通訳の方を見て会話をしがちになります。
なので意識的に、少なくとも相手が話しているときは、ベトナム語で何言ってるかわからなくても相手を見るようにしています。口調や表情からでも、相手の気持ちがわかることもあるので。
それから、これをされているだけで、相手と会話をしている感が随分増します。



これくらいだと思います。結局、あらゆるミーティングで重要なポイントを突き詰めただけの気もします。
実際のところ、外国人とミーティングする際は、「相手の言語を使えるようになることが一番の効率化」であることは間違いないです。

2014年1月11日土曜日

魚売りのおばあちゃんとルールについて

私はいつも徒歩で会社に通っているのですが、その途中にローカルのマーケットがあり、いつもそこを通ります。

マーケットの様子


ある朝、マーケットの様子がいつもと違うような気がしました。
これといった違いがあるわけではないのですが、いつもよりも静かな気がします。
マーケットを進んでいくと、公安の人が二人居るのを発見しました。
なるほどこれかな、と思いました。

公安というのは、日本で言う警察にあたる組織で、社会主義国ベトナムの治安や秩序を守る役割の人達です。
個人的には生活指導の先生みたいに見えなくもないです。

彼らは、路上で魚を売っているお婆ちゃんを取り締まっているようでした。
このおばあちゃんは毎日同じ場所で、プラスチックの風呂桶入った魚に囲まれながら、包丁で魚を捌いたり鱗を取ったりして売っています。

そこで交わされている会話を理解することは出来なかったのですが、おばあちゃんが魚やまな板や包丁を片付けているのを見ると、だいたい想像ができました。
おそらく、商売をしてはいけない路上で、このおばあちゃんは魚を売っていたのでしょう。

公安の人は、ルールにのっとっておばあちゃんを取り締まり、ルール違反であった路上の商売は消えて、また一つ乱れた秩序が正されました。




いや、でも…
とちょっとだけ反論したい気持ちになりました。

別に、良くない?
このおばあちゃんは毎日ここで新鮮な魚を売っていて、色んな人がそれを買いに来る。新鮮な魚とおばあちゃんはこのマーケットの一部のようなものだし、彼女が居なくなったらむしろ不便になる人もいるんじゃないだろうか。



ルールとか掟とかいうものは、複数の人達が集まって一緒に生活するときに、うまくやっていくための仕組みです。
ルールが決まっていれば、問題が起きた時にそのルールに則り、みんなが納得できる結論を出せます。
今回の話で言えば、もし路上で皆が自由に商売をしたら人やバイクの邪魔になるかもしれない。だから路上で商売するのは禁じよう。というルールが作られていたとします。
そのルールに則って、路上で魚を売るというお婆ちゃんの行為は取り締まられる。ということです。

でも、ルールに則って捌くことで秩序が守られることを除いて、お婆ちゃんが取り締まられることによる社会のメリットって、無いと思うんです。
ここにあるマーケット、あるいは町の人達は、彼らの中での暗黙のルールでもって上手くやっていたのではないかと思うのです。

ルールを決めることは重要ですが、ルールを、例えば都市部とこのローカルマーケットで、何も考えず同じように適用するのはちょっと違うように思います。

きっと理想的には、あらゆる詳細な個別具体的な状況ごとにルールが決められていることでしょう。
でもそれは現時点の社会では不可能です。せいぜい、原則にいくつかの例外を設ける程度しかできません。人の記憶には限界があるし、状況を判断するのに時間がかかってしまいます…



そんなことに頭を巡らせつつ、このお婆さんは今日の余った時間と残った魚をどうするんだろうとぼんやり考えていました。
おばあちゃんは翌日から何事もなかったかのように魚を売っていました。